ハセガワ TZR250 ファラウェイブルー プラモデル 21737
ヤマハ TZR250 1KTは、2ストロークエンジンを搭載したスポーツバイクです。このバイクは1986年発売からモデルチェンジを繰り返し、最終モデルは1996年まで生産していました。80年代にブームとなったTZR250のようなレーサーレプリカバイクは、市販車とはいえ中身はレーサーそのものと言ってよいほど高性能なものでした。
今回紹介するキットは2022年に発売されたハセガワの1/12スケールTZR250の限定仕様車であるファラウェイブルーです。今回は友人からの依頼で、当時オーナーだった友人が行ったカスタムの再現を含めて作成しました。
2ストローク250cc 45psの高出力を誇るエンジンは非常に多くのパーツで精密に再現されています。排気量250ccで45psのエンジンは90年代中期には無くなってしまい、2020年にカワサキからZX-25Rが発売されるまで現れることはありませんでした。
エンジンのパーツ構成です。今やほとんど見かけることのない2ストロークエンジンですが、加速が良いのが魅力でした。現在は排気ガスや騒音規制から国内で2ストロークエンジンを生産しているメーカはなくなってしまいましたが、今でもファンにより維持されている個体を見かけることがあります。
エンジンを組み立てて塗装した状態です。六角ナットまで精密に再現されています。このバイクはフルカウルなので、完成するとエンジンが見れなくなるのが残念です。(^^;
プラグケーブルなどのパイプ類も再現されています。パイプのパーツは非常に細いプラの突起部に差し込むのですが、かなり脆いのでテンションがかかりそうな部分は差し込み部分を真鍮線等に置き換えたほうが良いかもしれません。実際、組み立て中に何か所か折れてしまい、0.5mm径の真鍮線に置き換えました。
ヤマハのお家芸であったアルミデルタボックスフレームも溶接部分までリアルに再現されています。
ラジエターのパーツ構成です。
ラジエターを塗装した状態です。
エアクリーナーとフレーム、オイルタンクを塗装した状態です。オイルタンクはオイルが入っている状態を塗装で再現しましたが、カウルを取り付けるとほとんど見えません。(^^;
フレームにエンジンを載せた状態です。メカメカしい造形が最高です。(^^
ホイールとブレーキディスクローターのパーツ構成です。
ブレーキディスクローターは使用感を出すために、同心円状の傷を粗めの紙やすりで付けてみました。
ブレーキパッドの当たる部分は、少し質感の違う金属色で塗り分けてみました。
スイングアームとスプロケット、チェーンのパーツ構成です。
リアサスペンションのパーツ構成です。
リアサスペンションのスプリングは金属パーツで構成されています。塗装前にメタルプライマーを塗っています。
サスペンションのインナーフォークはピカピカの質感を出すためにハセガワのミラーフィニッシュを貼ってみました。
ウォールマウント ミラーフィニッシュ 伸びる 極薄ミラーフィルム 全長200mm、全幅90mm
ホイール、スイングアーム周りの塗装を終えた状態です。
最初の写真でお気づきの方もいるかと思いますが、今回の作例はチャンバーを社外品の物と交換した状態を再現しています。依頼主が当時交換していたドッグファイトレーシング社のチャンバーをオリジナルのパーツから型を取り、整形することで再現を試みました。
オリジナルのチャンバーの型をダイソーの「おゆプラ」と呼ばれる、お湯でやわらかくする事ができるねんどを使って取りました。
ドッグファイトのサイレンサー形状は純正のチャンバーと形状がかなり異なるので、エキゾーストパイプの部分のみ型を取りました。
ダイソーのおゆプラは白色タイプと透明タイプがあるので、型を色違いで分けてみました。
形にタミヤのポリエステルパテを流し込んで複製しました。
タミヤ メイクアップ材シリーズ No 27 ポリエステル 模型用素材
硬化後に型から取り出した状態です。
整形の精度は思ったよりも良く、エンジンやマウント部分ともピッタリ合いました。
サイレンサーはタミヤのプラ材5mmパイプを切り出して作りました。
タミヤ 楽しい工作シリーズ No 205 透明プラ材 70205
1mm経の真鍮線を軸にしてエキゾーストパイプと接続します。
フレームに取り付けて取り付け角度を調整していきます。
タミヤのエポキシパテでサイレンサーとの接続部分を作ります。
タミヤ メイクアップ材シリーズ No 51 エポキシ造形パテ 速硬化タイプ
ドッグファイトチャンバーは純正チャンバーと比べて細身なので削り込んで形を整えました。
サイレンサーの排気口は2mm経のプラ材を曲げたものを切り出して作成しました。
個人的にはかなりイメージに近づいた感じです。
ネット上の写真を参考にしながら鉄の焼けた感じを塗装で再現してみます。エンジンとの接続部分をダークアイアンで、全体をステンレス色で塗装し、クリアブラックやクリアオレンジで変化を付けいています。
サイレンサーはボルトも再現してみました。実写の写真画像ではアルミにクリアブルーを塗装したように見えます。
ドッグファイトのロゴをクリアデカールにプリンタ印刷して作成しました。
ハイキューパーツ クリアデカールTH B5サイズ プラモデル用素材 CLDTH B5
非常に手間がかかりましたが、個人的には満足できる完成度になりました。(^^;
フロントフォーク周りのパーツ構成です。
インナーフォークはリアサスペンションと同様にハセガワのミラーフィニッシュを貼ってみました。塗装では出せない輝きを再現できます。
メーター類とフロントライト周りのパーツ構成です。ヘッドライトのミラー部分はメッキパーツで再現されています。
タンクとリアカウルのパーツ構成です。
シートのパーツ構成です。シート裏も再現されており、シート取り外しキーの構造までわかります。
アンダーカウルのパーツ構成です。
フロントカウルのパーツ構成です。
燃料タンクの裏側に金属ワッシャーを追加で取り付けています。独自の追加工作なのですが、この理由は後ほど説明します。(^^;
細かなパーツを塗装した状態です。
ハンドル周りのスイッチ類の文字も緻密なデカールで再現されています。
タイヤはゴム製パーツで構成されています。少し使用感を出すためにウェザリングペーストで汚してブラシで擦ってみました。
メータの表示はデカールで再現されています。
デカール貼付け後、クリア塗料を流してみました。
リアカウルの「TZR250」のデカールはイタリックのフォントの傾きが逆方向の物も含まれています。実車でも2種類あったのだと思います。依頼主の個体と合わせて逆方向に傾いたものを貼りました。
カウルシールドの下部は裏面から塗装します。マスキング用の形も組み立て説明書に印刷されていますので、それを参考にマスキングテープを切り出しました。
カウルの塗装とデカールを貼り終えた状態です。更にクリア塗料を重ね塗りしてモデリングワックスで艶を出しています。
本キットのファラウェイブルー塗装は当時モータースポーツで活躍したソノート(SONAUTO)・ヤマハのスポンサーであったフランスのタバコメーカー「ゴロワーズ」のイメージカラーです。(なのでヤマハの青はゴロワーズカラーとイメージしている方も多いと思います)
カウルとタンク、シートを取り付ける前はまさに整備中状態です。(^^;
フロントカウルのシールドの接着は「接着剤がはみ出す」等の事故が起きると修正が困難なので、細く切った両面テープを使って固定しました。
この方法だとやり直しも可能なので個人的には良い方法だと思っています。強度的にも十分だと思います。
依頼主のTZR250に貼られていたステッカー類とナンバープレートもデカールを作成して再現を試みました。これらのデータはすべてInkscapeで作成しました。
Agip(アジップ)はイタリアのエンジンオイルブランドでモータースポーツの世界ではよく見かけるロゴでした。Agipは2010年にイタリアの石油会社「Eni」(エニ)と統合され、Agipの名前は近年見かける機会は少なくなったと思います。
北海道人には懐かしい、ミルクランド北海道キャンペーンのステッカーも作ってみました。これらのロゴは80年代後半に良く見られました。元ネタの画像をネット上から探してベクタ形式データを作成しました。
自作ステッカーを貼った状態です。
写真上部のナンバープレートはキットのものですが、角張った形状と厚みが厚すぎるのに違和感があったので0.5mm厚プラ版から新たに作成しました。縁の盛り上がりは伸ばしランナーを貼り付けて隙間に溶きパテを流しています。
依頼主のTZR250はフロントライトをイエローバルブに交換していたとのことで、それっぽく見えるようにフロントライトのミラー中心部にクリアイエローを塗ってみました。
国内ナンバープレートのフォントデータを作成している方が公開しているサイトからフォトデータを借用してナンバープレートのデカールを再度作成しました。フォント作者の方には本当に感謝です。
TZR250 1KTは乾燥重量126Kgと非常に軽量でありながら45psの出力と非常に高性能なバイクでした。2stエンジンバイクを販売している国産メーカーもなくなって久しいですが、今後このようなバイクが販売されることは恐らく無いでしょう。プラモデルという形でTZR250が復活したことは個人的にも嬉しいサプライズでした。
キット自体の完成度も素晴らしく、組み立て作業中は実際のバイクをメンテナンスしているような疑似体験を体験できるものでした。かつてTZR250のオーナーであれば(キットを作らなくても)パーツを眺めているだけで楽しめると思います。
組み立てに関してはバイクキット全般に言えることだと思いますが、小さなパーツが多いので強度的には厳しいものがあります。作成中には各種パイプの接続部分やサイドステップ、クラッチレバーを何度か折ってしまいました。それらは内部に真鍮線を通して補強しました。
今回の作例は色々手を加えたこともあって、完成までに2ヶ月以上かかってしまいました。TZR250は依頼主の車両を何度か運転させてもらったことがありますが、軽量2stバイクならではの圧倒的な加速は今でも印象に残っています。当時のことを思い出しながらの作業は楽しい体験でした。
最後の写真に写っているSONAUTO YAMAHAのヘルメットも依頼主が当時、使っていたものを再現したものです。次回は番外編としてヘルメットの作成と、燃料タンクの裏側に付けられた金属ワッシャーの謎について紹介予定です。(^^;
コメント
ありがとう
このTZRは北海道の数々の突端、本州では能登、神戸などを友人のGPXと走り回った私の相棒でした。
それを今回手動式にて再現してくれるとのことで難題の要望、時にはケチを付けることもありましたが、よくぞここまで仕上げてくれました。
改めてあの頃のことを思い出しつつ出来栄えに感動しています。
現物が手元に来るのを楽しみにしています。
依頼者より
追伸
今回、当時ショップで偶然見かけ、デザインが気に入り手に入れて何気に使っていたヘルメットが、実はバイクと同じゴロワーズカラーデザインだったこと、そこに書かれていたSONAUTOの意味、そしてそれに絡むYAMAHAの歴史まで知れたことは、大変貴重な副産物でした。そして何よりも知らずに使っていたヘルメットが、そのバイクにベストフィットだったことにかなりの時を経て判明したことに驚いています。次回そのヘルメット製作に込められたエピソードも楽しみにしています。
あっ もう一個だけ言わせて
このプラモキットの入手も偶然で2022年10月に普段行かないプラモ売り場を偶然通りかかり、何気に目に入り、衝動的に買いしてしまいました。それからバイクなので作るのが手間なので手を付けられず、そのまま埃をかぶっているところにこれまた偶然に手動式の話が呑みの席で出てきて、そこでこのキットの貴重さと乗ってた当時のそのままのバイクを再現すると聞いてぜひ是非形にして欲しいと思い、製作依頼に至りました。