持国天は仏教の守護神、四天王の一つに数えられます。また、持国天は古代インド神話の東方の世界を守護する神、ドゥリタラーシュトラが起源となります。
今回紹介するのは海洋堂から2022年10月に発売されたARTPLAシリーズの四天王像 持国天です。本シリーズは今後も四天王の多聞天、増長天、広目天が発売される予定です。
持国天の仏像は日本国内の幾つかの仏閣に収められていますが、作風はそれぞれ作成した仏師の個性が伺えます。海洋堂の持国天は奈良、興福寺の中金堂(ちゅうこんどう)に安置されている持国天像をモデルにしているようです。
質感も非常によく再現されたパーツで構成されています。パーツ数はそれほど多くはなく、組み立てだけであれば1時間もかからず完成させることができます。
顔のパーツ構成です。
顔を組み立てた状態です。パーツのつなぎ目は溶きパテで埋めて、はみ出した部分を乾燥後に拭き取っています。造形の微細なディティールを削らないようにと思い、紙やすりによる研磨は極力使わないようにしてみました。
上半身のパーツ構成です。
左腕のパーツ構成です。
右腕のパーツ構成です。複雑な形状を巧みなパーツ分割で再現しています。
下半身のパーツ構成です。
下半身と足を組み立てた状態です。
非常に凝った造形の台座が付属します。
台座を組み立てた状態です。
すべてのパーツを仮組みした状態です。塗装無しでも非常に見応えがあるので素組で飾るのも良いと思いました。塗装の工程を考えてこの時点では、台座と手足頭は接着していません。
下地にマホガニー色のサーフェーサーを塗っています。
エアブラシで影になる部分をフラットブラックで塗ってから、クレオスの41番レッドブラウンを塗っています。ハイライトになりそうな部分はクレオスの43番ウッドブラウンを塗りました。
基本塗装を終えた状態です。
クレオスのMr.ウエザリングカラー、サンディウォッシュを全体に塗って、乾燥後に綿棒などで拭き取っています。
これだけの手順でもかなり経年劣化の進んだ感じが出てきたと思います。興福寺の持国天は13世紀の鎌倉時代に作成された寄木造で、作者は運慶の父・康慶(こうけい)と考えられています。実物の写真では当時の彩色の一部が残っており、金が各所に施されていることがわかります。金塗装はドライブラシの要領で塗ってみました。
顔も当時の彩色が白く残っており、これもタミヤのエナメル塗料フラットホワイトを塗って、乾燥後に軽く拭き取ってみました。
白目をホワイトで塗装し、瞳をレッドブラウンで塗っています。瞳の位置は何度かやり直しました。(^^; 顔面のフラットホワイトはこの後、更に重ね塗りしています。
更に、暗くなりそうな部分をタミヤの墨入れ塗料ブラックで墨入れを行っています。金装飾の周りはクレオスのウェザリングカラー、フェイスグリーンで墨入れを行いました。
2009年に興福寺創建1300年記念「国宝 阿修羅展」が東京国立博物館で開催されました。(この展覧会の入場者は94万人を超えており、現在も入場者ランキング1位だそうです。)当時、この展覧会で発売された海洋堂の修羅像フギュアを購入しようとしていたのですが即完売になり、入手することが出来ませんでした。阿修羅像フィギュアは塗装済みのレジンキャスト製なので量産性は高くはないと思いますが、プラスチックモデルであれば安定供給が出来きて入手性は良くなると思いました。四天王シリーズの今後の展開も楽しみです。
今までミリタリーモデルを中心に作例を紹介していましたが、新たに仏像フィギュアにもチャレンジしてみました。数百年前に作られた仏像の経年劣化表現も、戦車などのウェザリング塗装の技法がかなり使えると思いました。
コメント
新しい境地を開拓されましたね。これだけウェザリングの技量があると楽しいだろうなあとうらやましく思います。
いつもコメント有難うございます。仏像フィギュアは新しいチャレンジでしたが近年発売された優れたウェザリング塗料のおかげで、かなりイメージに近い感じに出来たと思います。記事では説明していなかったのですが土台はウェザリングペーストで汚しています。