タイレル(ティレル)P34は1976年から1977年にF1(フォーミュラ1)に参戦したフォーミュラカーでです。前輪を4つ持つ独特の構造はF1の歴史の中でも唯一無二の存在で、1976年スウェーデンGPでの優勝の他、14回の表彰台と2シーズンの活動の中で多くの戦歴を残しました。
今回紹介する、タミヤ 1/20スケール タイレルP34は2022年8月に発売されたキットですが、1977年に発売されたキットにエッチングパーツを追加したものです。同様のキットはこれまでにも過去に何度か発売されたことがありますが(版権の問題か)GOOD YEARのデカールが省略されていました。そういった意味で本キットはこれまでのキットより付加価値は高いと思います。
ランナーには「(c)1977 TAMIYA」の刻印があり、本キットが45年前の製品であったことがわかります。私も小学生の頃に本キットを作成したことがあり、40年以上の時を超えて再度作成することにしました。
40年以上前の金型のためか多少のバリが出ています。
プラグコードはビニールコードで再現されます。これは1977年当時のキットも同様だったと記憶しています。
エンジンの造形は現在の水準で見ても非常に良いと思います。
エンジン廻りの各パーツの塗装色が異なる部分は接着する前にサーフェーサーを吹いて塗装しています。やはり素が古いキットなのでバリやパーティングラインが目立ちますが、丁寧に処理していきます。
マフラーの配管指定色ではセミグロスブラックでしたが、焼けた金属感を出すために、クレオスのダークアイアンやスーパーチタンをベースにスモークグレーやクリアオレンジで塗っています。
1976年当時のF1ではフォード製DFVエンジンが多くのチームに採用されたため、タイレルではマシンの差別化のため前輪を小径の10インチにすることにより空気抵抗を減らし、その分タイヤの接地面積が減ることを前4輪にすることにより補うことにしたそうです。
ブレーキディスクはエッチングパーツが提供されています。
エンジンを組み立てた状態です。P34で採用されたフォード・コスワース・DFVエンジンはV型8気筒、DOHC4バルブ、自然吸気2993ccというスペックでした。DFVエンジンはF1で154勝しており、この記録はF1史上最多だそうです。
本キットはメッキパーツも含まれていますが、パーティングラインが目立つので一度メッキを落とし、再塗装しています。メッキパーツは食器用漂白剤につけると数分でメッキを落とすことができます。
メッキを落とした跡、パーティングラインを紙やすりで消してサーフェーサーで塗装後、艶有りのブラックで下地塗装の後、クレオスのスーパークロームシルバーを塗りました。
スーパークロームシルバーは元のメッキパーツよりピカピカではないのですが、むしろ実車に近いと思います。
1977年当時は本キットはモーターライズキット(マブチ130モータを搭載して走行できるキット)として発売されていました。そのためシャーシには単3電池を格納できるスペースがあります。
ボディーのパーツ構成です。コックピットカウルは左右に分割されています。
ボディーは若干ヒケがあるため、パテで埋めてみました。
コックピットカウルはパーツにかなり歪みがあるので、サーフェイサーを吹いてはヤスリで磨きを繰り返し、なめらかな形状にしていきました。
シートはシートベルトを通す穴が省略されているため、穴を4箇所開けてみました。位置はかなり適当です。(^^;
フロントサスペンションは4輪のためかなり複雑な構造になっています。塗装の塗り分けが面倒ですが、マスキングを駆使して塗り分けています。
スロットルプレートにつながる燃料パイプはキットでは省略されているため、釣り用のウレタンパイプで追加してみます。釣具屋さんで売っている物は内径0.3mmが一番細かったのでこれを選択しました。
パイプ内にクリアオレンジを流してガソリンを表現してみます。
今回追加したパイプはスケール的にはかなり太いのですが、模型的なデフォルメとして良しとします。(^^;
ボディーの塗装は指定色のTS-15を使用しています。この色は缶スプレーでのみ提供されているため、塗料をスペアボトルに移して、エアブラシで塗装しました。
1976年富士スピードウェイで開催された日本GPでは、エンジンに防塵メッシュが採用されていました。本キットではメッキパーツで再現されています。メッキパーツは塗料の食いつきを良くするために、塗装前にマタルプライマーを塗っています。
メッシュ部分をマスキングして塗装しました。この形状の防塵メッシュがP34に使用されたのは運用時期でも本当に一時期のようです。
ボディーの一部は金属色です。ボディー色塗装後にマスキングして金属色を塗っています。
リアウイングのステーもエッチングパーツで再現されています。これをプラスチックで再現するのは強度的に厳しそうです。
リアウイングのサイドもエッチングパーツで再現されています。
リアウイングの組立前の状態です。
リアウイングに着いているラジエターはパイプが再現されていないため、これも釣り用の内径1mmウレタンパイプで追加してみました。
シートベルトは金具部分がエッチングパーツで再現されています。ベルトはシールになっていてシートにそのまま貼り付けることができます。
シートのヘッドレストが省略されているため、エポキシパテで作ってみました。形状はかなり適当です。(^^;
ヘッドレストとシートベルトを付けた状態です。適当に開けたシートベルト穴も位置は問題なさそうです。(^^;
タイヤはゴムパーツで構成されています。接地面を紙やすりで荒らしてみました。(写真では左側のみ)
GOOD YEARのロゴは白で塗装します。細い塗装なので神経を使います。
タイヤをホイルにはめた状態です。
ボディーはデカールを貼った後にクリア塗装を行い、更に細い目でヤスリがけ、コンパウンドによる研磨、モデリングワックスによる艶出しを行っています。
クリア塗装後に、一部変色した部分が出てしまいました。(タイヤハウス部分に一部色が白っぽくなっている部分があります。)クリア塗料で下地が溶け出してしまったようです。重ねてのクリア塗装で砂吹き(下地を溶かさないように吹き出す塗料を少なめに吹き付ける技法)を怠ったのが原因だと思われます。修正は難しのでこのままにします。(^^;
リアウィングとタイヤを付けた状態です。追加したラジエターのパイプは適当に配置しました。(^^;
ひらがなの「たいれる」の文字は1976年の日本GPのために、専用にマークされたものです。3号車パイロットのジョディー・シェクターの表記が「しえくたあ」になっているところがかわいいです。
1976年の日本GPでP34は3号車、4号車が出場しました。ジョディー・シェクターの駆る3号車は残念ながらオーバーヒートでリタイアでしたが、 パトリック・ドゥパイエの駆る4号車は2位を獲得しました。本キットは4号車も作成することができます。3号車と4号車はリアウィングの形状が大きく異なりますが、本キットでは4号車のリアウィングのパーツも含まれます。
40数年の歳月を経て、再びタイレルP34を完成させることができました。キットのパッケージにも記載されている通り、このキットは「上級者向けキット」となっています。メッキパーツを多用していることと、金型の劣化からか多少パーツの歪みやバリが出ているため、きれいに作るにはそれなりに手間がかかりますが、私のような世代に強烈な印象をあたえた「6輪タイレル」は、チャレンジしがいのあるキットだと思います。
コメント
クリアオレンジでガソリン表現は気が付きませんでした。巷の過去作例でパイプが黄色いのは劣化かなあと思っていたくらいです。。。
1/12と言われても気が付かない位の出来栄えですね!
コメントありがとうございます。P34は思い入れのあるキットだったので色々チャレンジしてみました。1/20では省略されているリベットや細かなパイピングも追加したかったのですが、やりすぎると完成しなくなるので目立つことろに追加工作を絞りました。(^^;